日本では学べない心理学を学ぶ。

通常海外の大学院で学ぶ理由は、日本よりその分野の研究が盛んだからである、という方が一番多いと思いますが、心理学の分野はまさしくそんな理由で留学する方が最も多い専攻の1つです。

例えば海外ではカウンセリング学という学位が独立して開講されていますが、日本ではまだまだ臨床心理学の一分野という位置づけになっており、心理学を専門研究している学生でもカウンセリングを明確に定義することは難しいのが現状です。日本では学ぶことのできない専攻を選択できることが海外大学院で学ぶ最も大きな恩恵であるということはいうまでもありません。

専攻

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臨床心理学(Clinical Psychology)

臨床心理学は心理学の中でも最もメジャーな学問で、主に精神疾患や心理的問題の治療・解決、あるいは人々の精神的健康の増進に貢献することを目指すことを目的とした学問です。

通常海外の大学院で臨床心理学専攻を希望する場合、心理学学士を要求されます。大学で心理学を出ていないと一度大学編入をして心理学学士号取得を課されるか、大学院が定める心理学のクラスを大学で履修しないと臨床心理学修士課程に進学することはできません。また研究対象は脳(および「心」)の機能的・器質的障害によって引き起こされる疾患を対象とし、通常統合失調症や躁うつ病といった重度のものから、パニック障害、適応障害といった中軽度のものまで様々な疾患を含みます。研究対象が多岐に渡るだけでなく、通常精神科や神経科が担当する疾患を扱うことになるので、いわゆるスクールカウンセラー等を目指す方には荷が重い専攻となるでしょう。

通常北米では臨床心理学の修士号は博士号と繋がっており、6年程度かけて卒業します。臨床心理学の修士コースのみというのはほとんどありません。常に研究者を目指すための学位と言えるでしょう。

専攻

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教育心理学(Educational Psychology)

教育心理学とは教育的視点から心理学を研究し、教育の現場に心理学的要素を活かそうということを目的とした学問です。

なお教育心理学においては、乳児期から青年期までの精神、知能の発達、そして人格形成がされるまでの過程を学ぶことになるため、発達心理学と混同する方も多いようですが、心理学的アプローチにより効果的な教育の方法を見つけ出そうとするということに研究目的が置かれていることが大きな違いとなります。

一方、発達心理学は人間の発達の課程により人間の心理はどのように変化し、どのような外的要因が心の成長に影響を与えるのか、ということを解明することを目的としています。昨今では教育心理学は教育現場で現れる問題を一般心理学の観点から解釈し、実際の教育に応用しようとする目的も追加され、昨今の多様化する教育現場の問題を心理学的アプローチで解決しようという流れもあることから、今後さらに注目を集める学問です。

海外大学院で教育心理学専攻を希望する場合も、通常大学で心理学を専攻している必要があり、場合によっては臨床心理の経験も出願条件に課される場合があります。

専攻

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認知心理学(Cognitive Psychology)

認知心理学は人間の高次認知機能を研究対象としており、知覚・理解・記憶・思考・学習・推論を研究対象としています。

そして脳科学、神経科学、神経心理学、情報科学、言語学、人工知能、計算機科学等の学問を駆使して研究するという特徴から認知科学と呼ばれる事もあります。最近では、意識や感情、感性といった問題にも取り組むようになり、認知心理学による研究成果に基づき、コンピューターによる情報処理のもと人の認知モデルを再検証することも研究テーマとなっています。

通常海外の大学院で認知心理学を専攻する場合は心理学部の1コースとなっていますので、大学時代に心理学を専攻していることが出願条件となります。

専攻

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カウンセリング学(Counseling)

カウンセリングとは専門的な訓練を受けたカウンセラーが、心理的問題を抱えているクライアントに対して言語的手段を用いて援助を行うことを指します。

心理学と混同する方も多いのですが、心理学が心理的問題を生物学や情報処理学等の知識を応用することで解明することが目的なのに対し、カウンセリング学はクライアントと対面し、言語的手段を用いて問題を「解明・解決」する手法を学ぶことを目的としており、対象と目的が異なります。ただカウンセリングの基盤をなす学問領域にカウンセリング心理学・臨床心理学等多くの心理学的知識を要する為、海外大学院でカウンセリング学専攻を希望する際、大学で心理学を学んでいる必要があります。

カウンセリングに近い概念として心理療法や精神療法がありますが、カウンセリングの主な対象者は発達や人間関係の問題で悩んでいる人であり、心理的問題や精神医学的な障害への治療を主な目的とする心理療法や精神療法とは異なります。ただ日本においては両者を混同して使っている心理学者も多いため、心理療法,精神療法,カウンセリングが明確に区別されている海外の大学院で研究を希望する方が多いのが特徴です。

また昨今注目を集めているコーチングは、クライアントの目的、目標を達成するための手法であるのに対し、カウンセリングは心的な問題を援助することが多いため、コーチングとカウンセリングは大きく異なる学問であることも忘れてはなりません。