【コラム42】重要だけど素朴な疑問に答えます(23年更新版)。

今回は、出願直前に「絶対に知らないと大きな損をする情報」を、知らない方があまりにも多いので、少しまとめて公表したいと思います。

①出願締切(Deadline)を過ぎても出願は認められるのか?
②イギリスの大学院は早く出願すればするほど合格率が上がるのか?
③米国などの大学院はスコアが足りなくても出願する意味があるのか?
④一度不合格になると翌年の再出願は不利になるのか?
⑤教授などに事前コンタクトは意味があるのか?
⑥エッセイ(志望動機書)で特定の教授を挙げアピールすべきか?


今回は特にこの時期(出願直前)に多い、上記6つの御質問に対して回答させて頂きます。ただ何分上記に関しての御質問の回答は、皆さんの留学実現に向け非常に大きな影響を与えてしまいますので、下記できるだけ真摯に回答させて頂いております。

海外の大学院はケースバイケースといってしまえばそれまでで、入学する年や学校、学部、コースによって上記のような要件は大きく異なることが実情です。

そのため、皆さんもご相談される方や閲覧する情報ソースによって異なる情報を入手し混乱してしまっているかもしれません。下記回答につきましては、弊社20年の経験をもとに、昨今の最新状況をふまえたうえで回答させて頂いております。確実なことは各学校によって異なるということを十分ご承知おきの上、最新の傾向としてご参考頂きますようお願い申し上げます。

①出願締切(Deadline)を過ぎても出願は認められるのか?
素朴な疑問です。
実際特にイギリスとオーストラリア以外の大学院では厳格な出願締切が設定されており、締切が過ぎても出願してもいいのか、という疑問を持つ方が多いと思います。

この御質問に対して明確な回答をするためには、この出願締切の意味を深く理解することが重要です。現在、海外の大学院の出願手続きには、大きく分けて二つのことを完了させる必要があります。一つ目は、オンラインアプリケーション(願書)を提出する、そして二つ目は、追加(書類及び)テストスコアを送付することです。そして重要なことは、通常海外大学院の出願締切は、上記一つ目の、オンラインアプリケーションを提出する期日であることがほとんどである、ということです。

二つ目の大学の成績証明書や各種テストスコアを送付するのは(オンラインアプリケーションさえ提出しておけば)、出願締切を過ぎてしまっても通常行うことができます。なお皆さんが最も気になる推薦状ですが、通常こちらもオンラインアプリケーションさえ提出しておけば、出願締切を過ぎても受理してくれることがほとんどです。

そうなりますと重要なことはオンラインアプリケーションを提出するために何が必要なのか、という点になります。ただこのオンラインアプリケーションに何が必要なのか、という点が学校やコースによって大きく異なるので複雑になります。例えばある学校では、オンラインアプリケーション上に推薦状やテストスコアレポート、エッセイ、履歴書、大学成績証明書など、全てアップロードする項目があり、「オンラインアプリケーションの提出=全ての書類を提出」、という学校もあれば、オンラインアプリケーションには個人情報のみ入力し、その他書類は全て別途メールや直接郵送させる、という学校もあります。

これは極端な例ですが、エッセイと履歴書以外はすべてオンラインアプリケーション提出後追って送る、というスタイルをとる学校は珍しくありません。そのため、皆さんが出願するコースのオンラインアプリケーションは何を求めているのか、ということをいち早く理解することが重要です。なぜなら、出願締切=オンラインアプリケーションの提出、という認識の学校が非常に多いためです。

ただ中には出願締切=オンラインアプリケーションの提出+全ての書類提出期限、という学校もありますので、注意が必要です(その場合は通常その旨はHP上で公開されていますので、注意深く確認することが重要です)。またオンラインアプリケーションの締切と各種書類提出の締切を分けて設定している学校もあります(その場合もHP上にその旨公開されています)。

②イギリスの大学院は早く出願すればするほど合格率が上がるのか?
通常英国の大学院はローリングといって出願した順に審査が開始されますので、できるだけ早く出願することが重要である、ということを耳にする方も多いと思います。

また英国の大学院はIELTSやTOEFLのスコアが足りなくても、(条件付き合格を提供しているため)出願が可能なので、出願校が決定したらエッセイ、推薦状などを自発的に準備すれば出願が可能です。そのためスコアが足りていなくても出願が可能なため、できるだけ早く出願することが合格の可能性を上げると思われている方が多いのが現状です。

これは一部分では合っていますが、一部分では間違っています。簡潔に言うと、トップスクールはスコアが揃った段階で出願した方が合格率を上げる場合が多いということです。この場合のトップスクールとは、単にランキングが上位ということだけではなく、それ以上に出願者が殺到する人気校を指します。

例えばLSEやImperial Collegeなどです。通常こういった学校は出願者が非常に多いため、スコアがない状態で出願しても保留となってしまうケースもあり(保留とは出願は受理されたが審査が開始されない状態)、その場合は追って必要スコアを提出しませんと審査を開始してもらえません。

出願者が非常に多い人気校は、スコアが足りている学生が多いため、足りている学生から審査を開始する傾向があります。また、そういった学校ではスコアが大きく足りない場合はネガティブな印象を与え、不合格になるリスクも含みます。

こういった学校は一部ですが、人気校に出願する場合は出願時期には非常に神経質になる必要があります。例えば11月頃にスコアが足りていないが、12~翌1月頃には学校が要求しているスコアが出る可能性がある(その自信がある)場合は、やはり待ってから出願すべきだと思います。その方がスムーズに審査を開始してもらえ、要求スコアを取得していることがポジティブに働くことが期待できます。

ただ人気校の場合ローリングですと合格者が人数に達したら締切となってしまいますので、そのバランスが難しいところです。通常入学年の1月頃までは(学校が要求するスコアを取得できる可能性がある場合は)出願を待ってみることもご検討頂ければと存じます。

ただOxford、Cambridge、LBS、またLSEやImperialの一部のコースは、他国の大学院と同様に出願締切を明確に設定している場合もあるので注意が必要です。

③米国などの大学院はスコアが足りなくても出願する意味があるのか?
これも良くお問合せ頂く内容です。特に出願締切までに学校が要求するスコアが取得できないと諦める必要があるのか、という御質問です。

このご質問の回答は、何点足りないのか?、また、近日中(出願締切後1カ月程度以内)に要求スコアを取得できる自信があるのか?、という二点に依存します。

まず何点足りていないのか?という点についてですが、こちらは数点足りない程度であれば出願してみる価値はあります。特に米国に関しては学部が直接審査を行うケースがほとんどですので、他の要件(大学の成績や推薦状、エッセイなど)が(審査官にとって)魅力的であれば十分考慮され合格、またスコアを取得することを条件に合格を得られるケースもあります。

一方欧州(特に公立の大学院)は大学院入試課で一貫審査をするケースが多いので、機械的審査のため1点でもスコアが足りないと審査が開始されない、という場合が多いのが現状です。

次に、近日中(出願締切後1カ月程度以内)に要求スコアを取得できる自信があるのか?という点についてですが、こちらは①の回答にも深く関わってきますが、スコアが足りない場合でも出願締切までにオンラインアプリケーションのみ出願手続きを済ませておいて、テストスコアについては追って送る、ということができます。

ただこの場合出願締切後どの程度スコアを待ってくれるのか、という点については各学校によって異なりますし、明確な公表はしていません。通常合格者が定員に達するまでは待ってくれるケースが多いです(オンラインアプリケーション提出の締切と、スコア提出の締切を厳格に設定している学校もありますが、その場合はその旨がHP上に公表されています)。

そのため、出願締切後学校が要求するスコアを近日中に取得出来る自信がある場合は、まずはオンラインアプリケーションを提出しておいて、スコアが取得でき次第追って学校に送る、という道もご検討頂ければと思います。

④一度不合格になると翌年の再出願は不利になるのか?
これもよく聞かれる御質問です。特にできるだけ多く出願し、「数打てば当たる」という手法を試みる方から御質問を受けます。

回答は、海外のトップスクールは(一度不合格になると)不利になる可能性が高い、ということです。理由は、不合格となった履歴が残るためです。海外の多くの(特に米国の)トップスクールでは、一度不合格となった出願者の履歴が残ります。

そのため、学校側も一度自分たちが不合格にした学生を審査する際は、特に合格させる際は相当神経質になる、ということです。実際一度不合格となった出願者は追加のエッセイなどを求められることも多く、その場合は不合格となってから再出願までに経験した内容や、各種テストのスコアアップなど、なぜ一度不合格となった自分が合格に値する人物に一年間でなったのか、という点について審査官を説得する必要があります。

一方それほどトップスクールでない場合は、不合格履歴が残らないことも多く、また再出願することでその学校への志望動機がそれほど強い、という熱意を審査官に伝えることができ、再出願によって一度不合格になった学校へ合格できることもあります。この辺が各学校のスタンスや人気度合いなどに依存しますので、再出願の要件について御調べ頂くことをお勧め致します。

来年入学できないのであれば留学自体諦める必要がある、という方は数打てば当たる戦法は間違ってはいませんが、希望する学校に入学できないのであれば再来年入学も視野に入れる、という方は(特にトップスクールを目指している方は)ファーストアプリケーションの重要性を御理解頂き、慎重に出願校選定を進めて頂ければと存じます。

⑤教授などに事前コンタクトは意味があるのか?
これは一昔前にご留学を実現させた方に聞くと、「絶対に事前コンタクトは必要、むしろ学校に直接足を運んで教授にアピールするくらいのことをした方が合格の可能性が上がる」、というアドバイスを頂くことも珍しくないと思います。

特に「特定の教授に熱意を伝える、直接アピールする」という手法は昔からアドバイスされる方が多いと思います。この手法は一部例外はありますが現在はほとんど通用しません

むしろ審査にネガティブに働くこともあるので注意が必要です。なぜ一昔前まで通用していた手法が現在通用しないのか?それは単に学校の運営手法の変更のためです。

一昔前は特定の教授に直接アピールし、その方から直接合格の約束をもらうこともできましたが、現在はGraduate Admission Office(大学院入試課)、そして各学部のAdmission Committee(各学部の入試課)で組織的に審査されることがスクールガバナンスで義務付けられているため、現在では(審査の公平さを徹底するため)一教授に合格前の出願者が直接コンタクトをとることを厳格に禁止している学校も少なくありません。

また、日本を含む先進各国でもれなく起こっている少子化問題に伴い、海外の大学の多くが経営難であるということにも依存しています。昔に比べて資金難であるため、審査の効率化と公平さのバランスを保つ必要があり、そのためにはできるだけ出願締切を設けて出願を一定の時期に集め、出願方法を統一化し、一度に審査を行う必要があるためです。

そのため海外ではMasterコース(修士課程)は当然ながら、Doctorコース(博士課程)でも教授への事前コンタクトは行わず、指定された画一的な出願方法で出願させ、審査を行うことが珍しくありません。まずは一定の時期に出願をさせ、各出願者の希望やバックグラウンドなどから、担当する教授がいるかどうかをまとめて各入試課で審査を行うためです。

次に一部の例外についてです。例えば英国の各種リサーチ系コースや、北米のthesisベースコース、またはPhDコースなどで、事前コンタクトを逆に義務付けているケースがあります。その場合はHP上でご自身の研究テーマに沿った教授をみつけ、簡単なリサーチプロポーザルを送ってアピールする必要があります。またそういったケースは通常アプリケーションにコンタクトを入れた教授を記載する箇所がありますので、できるだけ受入許可を希望する教授からもらえるよう、出願前に手を尽くす必要があります。ただこういったケースは現在非常に稀です。

もうひとつの例外はディグリー(学位取得)目的の留学ではないケースです。ポスドク留学などはこのケースに当てはまります。担当教授からの推薦で一定期間研究留学するといった、マスターやドクターなどの学位を取得することが目的でない留学の場合は、事前に担当教官を見つける必要があるので注意が必要です。

⑥エッセイ(志望動機書)で特定の教授を挙げアピールすべきか?
エッセイなど志望動機書で特定の教授を挙げ強くアピールすることは、場合よって諸刃となるので注意が必要です。

現在入学後の研究テーマや研究方法、研究目的など明確に決まっていて、その研究ができなければ入学する意味がない、という方は是非希望する教授を探し特定の教授にアピールして下さい。ただそういった点が決まっていない方が無理に行うと、審査にネガティブな影響を及ぼしかねないので細心の注意が必要です。

というのも、志望動機書で特定の教授を挙げアピールするということは、逆を言うとその教授に修士論文などを担当してもらえない、その教授が開講するクラスが受講出来ない、といったケースが起きると、審査官は「この学生を入学させても学生の希望を叶えられない」と思ってしまいますので、審査にネガティブな影響を与えてしまうことを容易に想像頂けると思います。

もしそこまで特定の教授へのこだわりや研究テーマが明確に決まっていない場合は、むしろそのコースの必修科目の魅力や修士論文を担当してもらえる教授陣の充実度、そして過去の研究プロジェクト実績、またコースの一部としてインターンをさせてくれたり、他大学との単位交換プログラムの充実度、研究留学であれば進行中の産学連携プロジェクトや研究施設の充実度、近隣研究施設との提携プログラムなど、そういったコース全体、そしてコースを開講している学部(研究所)の魅力を伝えていくことの方が、アピールが多岐に渡り入学後の選択肢も制限されませんし、審査上のリスクがありません。

以上の通り、研究テーマや目的がしっかり決まっている方は特定の教授をアピールすることは非常に重要になりますが、そういったことがまだ漠然として決まっていない方(入学後決めようと考えている方)は、無理に特定の教授にアピールすることは逆にリスクをはらむ可能性がある、ということを憶えておいて頂ければと思います。