「キャリアゴール実現」という目的
前述の通り、一つの目安である3年という職歴をお持ちの方は、大学院留学の目的が大きく3つに分けられると思います。一つ目は、派遣留学、二つ目はキャリアアップ留学、そして三つ目はキャリアチェンジを目的として大学院留学です。
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派遣留学実現のため。
まず派遣留学の場合は、公/社費に関わらず、組織の期待を背負っての留学となりますので、必ず成功させる必要があります。
特に管理職の方の場合、留学が決まった後留学準備のため一時的に責任あるポジションを離れ他の方に任せたり、先輩から続いている成功事例を絶やせない、といった具合に、見ていると私費留学の方よりご準備段階はより大きなプレッシャーの中で準備を進めていらっしゃる印象です。
ただ私費の方より留学先や専攻といった点は制約がありながららも、将来のヴィジョンは明確な状態で留学を実現できる利点があると思います。
特に派遣留学の方は、既に所属組織の選考を抜けてこられたという実績がありますので、出願書類や出願校選定を工夫することで間違いなく海外大学院の審査を有利に進めることが可能です。
一方それなりのキャリアを積まれてきた方が私費で留学を決断される場合、やはりそれなりの決断が必要となります。ではその決断を後押しする社会人にとっての大学院留学の意義とは何でしょうか?
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「キャリアアップ」という目的
ここで言うキャリアップ留学とは、現在の職種と少ながらず関係しているコースへの入学を指します。例えば現在広告代理店に勤務していて、今後さらに広告業界でキャリアップをしていきたいので、一度広告学やブランディングといった分野で世界をリードしているアメリカの大学院で学び、その後外資系企業も含めさらに転職しキャリアップを行う、というようなことです。
または現在ベンチャー企業に勤めていて、近い将来起業をしたい、そのためにMBAで経営学についてしっかり学び起業をしたい、などもキャリアップの例だと思います。
もちろん研究職を目指す方も海外大学院で効果的なキャリアアップを図ることが出来ます。例えば日本より海外の方が研究開発が進んでいる場合です。例えば昨今話題となっているChatGPTに代表される対話型AIも、BardやLLaMAといった世界を席巻している企業はすべて海外資本です。またコロナ禍で提供されたワクチンはすべて米/英国の製薬会社ですし、コロナの各種統計は米国のジョーンズホプキンス大学が中心に世界中に発信していたのも記憶に新しい方も多いと思います。
このように日本より明らかに進んでいる分野に留学することで、日本にいるよりさらに最先端の研究が可能になりますし、世界的に著名な教官について学ぶことができます。
さらに海外大学院で研究を進めることで、英語「で」研究を進めるスキルと知識が付きますので、海外の論文について探求する場合、英語での研究論文が必須の場合、海外の研究者とのミーティング、そして各種海外でのプレゼンテーションやディスカッションに臆することなく挑戦することができます。
また、現在日本の各大学は軒並み国際化を図っていますので、英語「で」専門分野を(研究するだけでなく)教えることができると、日本での就職は間違いなく有利に働くと思います。
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「キャリアチェンジ」という目的
就職されて4、5年と働いてきますと、様々なご経験を積まれることで、「新たなキャリアゴール」を見つける方のお話をよくお伺いします。
例えば金融機関にお勤めの方で、発展途上国向けの金融商品を取り扱ったことで、国際開発の分野でキャリアヴィジョンを再構築されたいと思われるケースや、携帯電話の開発を行っていたら目や指に障害を抱えている方でも自由に使えるスマートグラスの開発に携わりたくなった、といったケースです。
そういった新たに見つかったキャリアゴール実現のために大学院留学を選択される方も少なくありません。現職を続けることは問題ないのだが、このまま現職を続けていてもどうしても新しいキャリアゴールにはチャレンジできない、といった場合です。
現職は嫌ではないが、新たなキャリアゴールにチャレンジするためにはどうしても転職が必要となる、その際の架け橋として大学院留学を使うケースです。ご承知の通り大学院留学は皆さんのキャリアゴールを実現するための途中経過でしかありません。ただ専門分野の変更などにそのブリッジになってくれることも事実です。
例えば前述の例でいえば、FinanceからDevelopmentと、EngineeringからProduct Designといった具合に専攻を変更してチャレンジすることが出来ます。そして各大学院で学んだ内容をアピールすることで畑違いへの転職をスムーズに進める、という目的で大学院留学を選ばれる方がいらっしゃいます。
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「キャリアゴール実現」に必要な英語力を付ける。
最後に将来のキャリアゴール達成のために学位というよりは、英語力が必ず必要になってくるという方ですね。例えば国際協力を行っているような行政法人、NGO、NPOなどのキャリアを目指している方、または外資系企業なども上司や同僚とのコミュニケーションは英語になるでしょうし、様々な重要書類、プレゼンテーションなどにも英語力は必ず必要になってくると思います。英語講師や通訳・翻訳家、日本語講師なども英語力が必ず必要になってくる職種と言えます。
もちろん日本でも英会話スクールに通うなどして英語の勉強を続けることはできますが、ビジネスレベルで使用できる英語力を付けることは非常に困難なことは周知の事実かと思います。そこで、現地に本物の英語力を身に付けるため大学院留学を選ばれる方も実は少なくありません。こういった方の場合専攻は後回しになりますね。
大学院留学は語学留学と違い、「英語を学ぶ」わけではなく、「英語で学ぶ」ので、英語で何が専門知識を学ぶことになり、英語は学ぶことのただのツール(手段)ということになります。私の経験上英語で英語学んでいても結局本物の英語力が付きません。英語で何かと学ぶことにより、英語で情報を取得し、情報を発信するためのコミュニケーションツールとして使用することにより始めて本物の英語力は付くものだと思います。
大学院留学中はご存知の通りプレゼンテーションやディスカッション、グループワークなど様々な場面で英語をコミュニケーションツールとして効果的に使用しなければならないことになります。もちろん最初は第二言語して英語を使用しなければいけない私たちにとっては非常に困難なことですが、留学も後半になると第一言語として英語を使用している学生に混じって英語をコミュニケーションツールとして使用できていることに気付くでしょう。
語学留学では英語を第二言語として使用している学生が集まって「英語を英語で」学びますので、本当の英語力が付かないというのが現状です。 ただ英語力を付けるために大学院留学を選びは安易と思う方も多いかと思いますが、実際卒業後の就職活動の際最も分かりやすくアピールできるポイントは英語力になりますし、英語力を必要とする(英語力がないと一定のポジションより上に行けない)企業への入社を希望する際、ビジネスのフィールドで使用できる英語力を付けるには大学院留学が一番最短、最良の道であることは言うまでもありません。
実際費用の件を考えても語学留学より大学院留学の方が安く済むことも特記しておきます。
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新社会人が大学院留学を実現する意義。
以上日々新社会人の方からご相談をお受付する中で感じております内容をメッセージとしてお伝えさせて頂きましたが、改めて新社会人の方が留学を決断される場合、やはりひとつのカケになることは否めません。
通常3年程度で職歴としてしっかりと認められるという日本の文化を考慮しますと、3年以内での留学はその後人生を飛躍的に前向きに運んでくれる可能性もありますが、再就職やキャリアチェンジがうまく運ばず、留学が齎すご苦労も逆あるかもしれません。
しかしそのカケに挑戦してでも「現状打破」を試みる必要がある方には、是非そのカケの勝率を少しでも上げる努力をして頂きたいと思います。それは例えば、①できるだけ日本で英語力を付けていく(特にリーディンとライティング)、②過去と未来の希望を見据えじっくりと専攻を選ぶ、③生活環境と卒業後のご自身のブランティング強化として最適な学校を(ランキングや知名度を考慮し)選択する、といったようなことにご留意頂きながら、お時間をかけじっくりご準備することが最も重要ではないかと思います。
現在では北米や英国だけでなく、欧州やオセアニア、北欧なども含めることで、諦めていたランキングの学校に行けたり、諦めていた専攻を選ぶこともできます。そのため、新社会人の皆さんは特に、できるだけ数多くの選択肢を検討のうえ、ご留学を決断頂きたいと思います。