【コラム No 15】GPAで大学院留学を諦めようとしている方へ ~GPAを補う方法~

こちらのコラムは約10年前に公開したものですが、今でも数多くの方に閲覧頂いているようです。やはりGPAは一度ご卒業してしまうとどうしてもご自身で修正することができないため、大学院留学を目指す場合は鬼門となっているようです。そのため今回はこちらのコラムも最新情報をふまえ更新致しました。改めまして下記ご参考頂ければ幸いです。

【コラム No 15】GPAで大学院留学を諦めようとしている方へ
~GPAを補う方法 前篇~

GPA(大学成績評定平均)についてはご質問が多いので、セミナーやQ and A、こちらのコラムでも何度か取り上げてきましたが、依然としてお問合わせが多いので、改めて解説させて頂きたいと思います。今回はGPAが低い方に対象を絞り、その対処方法についてまとめさせて頂きます。

最初にGPAでご質問、ご相談が多い要因を下記が挙げてみたいと思います。皆さんの悩みが当てはまるかご確認下さい。

1、GPAの計算方法が分からない:

これは日本の大学の成績評価方法が統一されていないという問題です。通常北米などはほとんどの大学でA、B、C、Dと4段階評価方法をとりますが、日本の大学は、A、B、Cと3段階の評価方法になっていることがほとんどです。ただ最近では大学の国際化の一環として、国際基準に合わせ4段階にしようという流れがあります。しかし、日本の大学はA、B、C、Dとするのではなく、Aの上にAA(ダブルエー)、A+(エープラス)、S(エス)、などを足し、AA、A、B、CまたはS、A、B、Cなどの方法で4段階にしている大学が増えているのが実情です。そのため、同じ4段階でも北米などとは評価方法が異なり、一般的に知られているGPAの計算方法が適用されない、これが皆さんを混乱させている所以です。

2、GPAを上げることは不可能:

GPAはTOEFLやIELTS、GRE/GMATなどのテストスコアと異なり、既に大学を卒業していると努力で上げることができません。また、たとえ現役大学生のうちに大学院留学を思い立っても、既に3年生を終えていると残りの卒業単位数も少なく、なかなかGPAを大幅に上げることはできないのが実情です。つまり、「やり直しきかない」、ということです。そのため、例え優れた英語力や優秀な研究実績や職業経験があっても、GPAが悪いとトップスクールに入学することが難しくなり、大学院留学自体を諦めてしまう方が多い、というのが現状です。

以上のように、GPAとは大学院留学の可能性を測るうえで非常に重要なファクターにも関わらず、正式な計算方法が存在せず、そして大学院留学を思い立った時には既にGPAを努力で上げることができなくなってしまっている、という事態を招く、非常にやっかいな内容であることが分かります。

次に、GPAを補う方法を解説する前に、念のため上記について回答をしておきます。

1、GPAの正式な計算方法とは?:

世界各国の大学で、成績評価方法が異なる以上、国際的に正式に決まったGPAの計算方法は存在しません。通常皆さんが出願する学校が独自で定めています。ただ、日本の各大学が独自で決めている計算方法で算出されたGPAをもとに皆さんが希望する海外の大学院が審査をしているとは限りません。通常北米などは各大学院で定めているGPAの計算方法をもって再計算し審査が行われますので、皆さんのご出身大学の成績証明書に記載されているGPAが低くても諦めるのは早合点です。

2、GPAを上げることは不可能?:

既に大学を卒業されてしまっている方は、GPAを上げることはできません。どうしてもGPAを上げたい場合は、大学に再入学しGPAを塗り替える必要があります。しかも通常海外の大学院は日本の大学院より大学の成績を重視しますので、大学の成績を大学院で補うことは一般的に難しいのが現状です。そして海外の大学院では通常出願最低GPAのラインを設けており、この数値より低いと審査すらしてもらえないこともあります。

以上のようにGPAについては皆さんが懸念されている通り、厳しい回答となってしまいます。そこで、以下に今回のコラムの目的である、GPAを補う方法について解説させて頂ければと思います。GPAを補う方法はいくつか存在します。順番に解説していきますので、皆さんが実際にトライできるものを見つけ、是非チャレンジしてみて下さい。

GPAを補う方法① 海外の大学へ編入学してGPAを塗り替える。

通常北米など可能な方法で、もう一度大学に入学し直し、GPAを塗り替える方法です。厳密いうと「補う方法」ではなく、GPAを書き換える方法となります。ここで重要なことは、「再入学はしない(あくまで編入学)」、そして「卒業する必要はない」、ということです。

まず一年生から始めるような、再入学はしない方が賢明です。通常GPAは一般教養科目や外国語科目より、専門科目と呼ばれる3年生以上から履修クラスを重要視します。そのため、一年生からやり直すと、一般教養科目から始める必要があり、期間や費用がかかり過ぎるだけでなく、余計な単位を履修する必要が出てきてしまいます。

次に編入学してもその大学を卒業する必要はないということです。既に皆さんは日本の大学を卒業し、学士号(Bachelor)を取得していますので、大学院に出願することができます。問題は成績のみとなりますので、編入学後いくつかクラスを履修し、GPAを塗り替えることに成功した時点で大学院へ出願するのが最も効率的です。間違っても卒業するまで在学しようとは思わないで下さい。大学卒業まで在学することは、大学院入学が目的なのであれば、余計な時間と労力がかかってしまいます。

次にどのような大学に編入学するか、という点ですが、まずネーム(ランキング)などにはこだわらない方が賢明です。無理にレベルの高い大学に編入し、成績を落としてしまったら本末転倒してしまいます。もう一つ重要なことは、編入する際、日本の大学で履修した単位をできるだけ多く認めてくれる大学を選ぶ、ということです。そうしないと編入学後すぐに専門科目を履修することを許されず、一般教養科目や外国語科目の履修を義務付けられるケースが考えられるからです。GPAを塗り替える目安の単位数は多くても20~40単位程度です。重要視されない一般教養科目などの履修義務が生まれない大学を選ぶことも非常に重要となります。

最後に、これは当たり前のことですが、大学院で学びたい内容に関連する学部(大学院で学びたい内容の基礎が学べる学部)に編入することです。例えば経済開発を大学院で学びたい場合は経済学部に、ネットワークマネージメントを大学院で学びたい場合はコンピューターサイエンス(情報管理)学部へ、といった具合に、大学院で学びたい内容にできるだけ近い学部に編入することも重要となります。そこで高いGPAでクラスを履修することができれば、GPAを塗り替えるだけでなく、研究実績なども効果的にアピールでき、合格の可能性はさらに上がるでしょう。

以上のようにGPAを塗り替える方法として、大学編入は効果的な方法ではあります。しかし大学編入したからといって、必ず高いGPAが習得できるわけではなく、成績が低いとかえって逆効果となってしまいます。言わずもがなですが、海外の大学では授業や課題、各種テストなど全て英語で行われます。そのためクラスを履修し、単位を取得するだけでも大変な苦労があります。そこでGPAを高めようというのは、(日本の大学でGPAが低かった方ならなおさら)さらに難しいことではないかと思います。そんなリスクを背負って大学編入学のために留学することは、既に大学を卒業されて社会人となっている方、または既にほとんどの卒業単位を取得された大学生には、非常に難しい選択ではないかと思います。

GPAを補う方法② GRE/GMATのハイスコアを提出する。 

こちらは一般的に北米のみ可能な手段ですが、特にアメリカの大学院はGRE、またはGMATでハイスコアを提出することで低いGPAを補うことが可能です。

通常アメリカのトップビジネススクールはGMATのテストスコアを要求しますが、このスコアで合格者平均スコア以上を提出することができれば、十分低いGPAを補うことに成功します。また、ビジネススクールであれば職歴もGPAを補う材料となり、平均以上のGMATスコアと、優秀な職歴があればアメリカのビジネススクールであればGPAについてはそれほど懸念される必要はないと思います。

次にビジネススクール以外の方の場合ですが、こちらはGREというテストが必須となります。この場合出願する専攻によって若干スコアメイクの状況は変わってきます。例えば統計やデータサイエンスといった工学系学位の場合は、GREの中でもMathmaticsセクションが重要となります。また公共政策や公衆衛生学といった学位も文系寄りの専攻ではありますが、勉強内容に統計学が多分に含まれますので、GREのMathmaticsセクションでハイスコアを提出できると十分GPAを補うことができると思います。

GPAを補う方法③ WESなどの第三者機関に再審査を依頼する。

こちらは常々セミナーやコラムなどを通じてお伝えしていますので、皆さんにも十分ご理解いただいていると思いますが、特に北米ではWESなどの第三者機関に日本の成績証明書の再審査を依頼することができ、通常GPAは大きく上がることが期待できます。しかもこういった第三者機関が発行した証明書は北米(アメリカ/カナダ)の大学院であればほとんど学校で認められています。