【コラム No2】条件付き合格のカラクリ

【コラム】条件付き合格のカラクリ
~条件付き合格制度がイギリス・オーストラリアに集中する訳~

昨今では、海外大学院は「英語力がない方」にも非常に門戸を広げています。その象徴的な制度が「条件付き合格制度」です。

条件付き合格制度をご存知ない方のために少し解説させて頂くと、出願時に英語力を問わず、入学前に指定された英語力まで伸ばすことを条件に合格をもらえる制度です。この制度を利用すると、入学する約半年前には条件付き合格をもらえますので、お仕事の離職時期や、就職活動など、ライフプランが組やすくなります。しかも昨今では、条件付き合格をもらった大学の付属英語学校に一定期間通うことで、条件となる高い英語力を免除してくれる制度や、「大学院留学準備コース」なるものも存在し、その門戸はさらなる広がりを見せています。しかしこの留学生には非常に便利な条件付き合格制度ですが、現在イギリス、オーストラリアのみで提供されている制度です。イギリス、オーストラリアではメルボルン大学、シドニー大学、オックスフォード大学、ロンドン大学など、非常に国際的に知名度のある学校でも提供しているのが特徴です。

 

ではなぜこの条件付き合格制度はこの二カ国だけなのでしょうか?

 

その答えは、オーストラリアとイギリスの教育の歴史にあります。

 

イギリスは1990年を堺に、少子化のためほぼ全ての大学で経営難に陥りました。そこで学生数の底上げをするため、留学生の獲得に目をつけたのが時の首相、トニーブレアです。イギリスの大学は99%が国立大学のため、運営費は政府からの補助金が頼りでした。しかしこの補助金では運営することが難しくなったため、高額な授業料を収めてくれる留学生の獲得に本格的に乗り出したのです。また、1990年を堺に世界中に広まり、世界をボーダレスの時代に導いたインターネットの登場により、急速に広まった国際化の波に教育現場も適用する必要があったことも重要な要因の一つです。急速に国際協力を高めるためには、教育現場を国際化することが急務だったわけです。この大学の運営費を留学生の授業料で賄うこと、そして教育現場を国際化すること、という留学生を増加させることは一石二鳥の政策だったわけです。

 

そして時を同じくしてオーストラリアでも、この同じ課題に対して、99%国立で運営しているため国策を持って対応することが急務となりました。イギリスとオーストラリアが行った留学生増加政策は、細かくはビザ申請の簡素化や情報力の強化等ありましたが、大きくは世界75カ国以上に公的な機関を置き、直接母国の学校情報などを提供することでした。その政策は実を結び、留学生の数がイギリスではこの20年間で約4倍、そしてオーストラリアではなんと7倍という結果を出しています(アメリカは約1,7倍、日本は約2倍)。

 

ではここで話を戻し条件付き合格制度の話ですが、なぜこの2カ国でのみ提供されているのかというと、世界75カ国以上の公的な機関を置き留学生を増やす政策は、イギリスやオーストラリアの留学生の絶対数は増えますが、各大学へ均等に留学生が増える訳ではありません。そのため、各大学が生き残りをかけ留学生の獲得に向けた政策を行うことになりました。それが「条件付き合格制度」です。国策で増えた留学生を、各大学がより受け入れやすくするため、英語の壁をできるだけ取り払おうと行った政策が条件付き合格制度というわけです。ちなみに日本とアメリカは私立大学が75%なので、各大学が独自で生き残りをかけ切磋琢磨しています。今後留学生を増やし国際化に成功する学校と、淘汰されていく学校が分かれてくるものと思います。

 

ここまででなぜ条件付き合格制度がイギリス、そしてオーストラリアのみなのか、という理由に関してはご理解いただけたのではないかと思います。

 

次の【コラム】では、このイギリス、オーストラリアの留学生増加政策により、どういった歪みが生まれているのか、という留学生希望者が知っておくべきリスクについて解説します。