【コラム34】IELTS for UKVI受験の必要性はあるのか?(第1部)

海外大学院の出願に使用できるIELTSですが、現在下記5つの団体で運営、実施されています。

1. 公益財団法人 日本英語検定協会
2. 英国非営利団体 ブリティッシュ・カウンシル
3. IDP
4. JSAF
5. バークレーハウス

つまり、「IELTSという国際的にも知名度のあるテストが、(日本国内において)二5つもの団体で開催されている」、という受験者を混乱に招く状態になっています。

まずはその理由について、事の背景からご説明させて頂きます。

IELTSはもともとケンブリッジ大学の一部門である、ESOL試験機構(Cambridge English Language Assessment)という、英語学習者やその指導者のために教材やテスト開発を専門に行っている団体が試験開発を行い、英国政府に正式に認定された公的な国際交流機関が世界各国で試験の実施及び管理を行っています。

そのため、2010年頃までは日本国内で開催されるIELTSも、日本で唯一の英国公的機関であるブリティッシュ・カウンシルが行っていました。しかしIELTSの知名度向上により、政府の公的機関のみで運営することが難しくなり、日本国内で英検などを運営している日本英語検定協会と共同運営することに決まりました。その後共同運営ということになっていますが、試験の実施や予約管理、会場の選定、スコア発表等は全て日本英語検定協会が行っています。

その後、再度2014年10月にブリティッシュ・カウンシルでもIELTSが開催されることに決まりました。その際日本英語検定協会で開催しているIELTSが取り止めになり、ブリティッシュ・カウンシルに一本化すれば問題なかったのですが、日本英語検定協会も引き続きIELTSを開催することになり、一カ国で(日本国内で)一つのテストが二つの団体で開催される、という異常事態になっています。

その後現在までIELTSの開催機関は増え続け、気が付けば5つの団体で開催されるという事態になっています。

そして現在、英国の大学では、ブリティッシュカウンシル以外で開催されたIELTSテストスコアは認めない、という学校が増えています。それはなぜか?

英国政府が、「政府が正式に認定した会場で行われたテストでないとビザ申請時に認めない」、と発表を行ったからです。つまり、日本英語検定協会などで行われたテスト自体に問題があるのではなく、会場に問題があるということです。英国政府がなぜこういった発表を行ったかというと、2013~2014年に世界中で開催されたIELTSで多数不正受験が発覚したからです。

所謂替え玉受験などが横行し、テストスコアの信憑性が国際的に疑われる事態に発展しました。その際もちろん日本英語検定協会で開催されたテストに特別疑いがかけられた訳ではありませんが、こういった背景のもと、英国政府はビザ申請に使用できるIELTSスコアは政府が公的に認めた会場で行ったIELTS(日本ではブリティッシュ・カウンシルが実施したテスト)に限る、という声明を発表しました。

そのため、英国の大学も、学生ビザ申請時に認められないスコアで合格を出す訳にはいきませんので、政府の意向に沿った形で公的な機関で行われたIELTS(日本ではブリティッシュ・カウンシルが実施したテスト)しか認めない、という動きに変化しました。

ただもともとテストの内容ではなく会場のみに問題があったため、現在日本英語検定協会などとブリティッシュ・カウンシルで開催されるIELTSテストは内容についてはまったく同じものとなっています(もちろん難易度も変わりません)。

その後約10年の時を経て、英検などのテストセンターでも認める動きも活発化し、現在では英国政府が認定するテストセンターは当初の2カ所か15カ所まで増えています。詳しくは下記にてご確認頂くことが可能です。

Prove your English language abilities with a secure English language test (SELT)
https://www.gov.uk/guidance/prove-your-english-language-abilities-with-a-secure-english-language-test-selt

以上、ここまで「同じテストが異なった組織で行われているという」問題の背景をご説明させて頂きました。第二部では、実際に英国を含む海外の大学院では、通常のIELTS (日本英語検定協会開催)はどの程度認められるのか、というお話に移りたいと思います。

→第2部へ続きます。